さて、皆さん”良い革”って何でしょうか?同じ質問を10年前に、日本の革屋さんと、染色職人さんに質問したことがあります。革屋さんは、染色の事を説明してくれました。染色職人さんは、”革は、人の好みだから”とそっと教えてくれました。私は、バングラデシュで、30種類以上の革の開発に携わりました。といっても、仕上げは、革のテクニシャンが調整してくれるので、”自分が開発した”とは言えないです。それでも、スタートする当初はすごく大変で、自分好みの革ができるまで3年以上かかりました。

バングラデシュは最近はグローバル視点で、あまり率直な事を聞くことはなくなりましたが、時々偏見を持つ人などがいました。バングラデシュやインドの革は、日本が参入する前よりも、もっと前からイタリアやドイツの大手会社が開発や指導を進めて、革製造に知識を持つ職人が多数いらっしゃいます。日本の革屋さんは、それをよく知っているので、バングラの革=良い革という認識を持つ人が多くいらっしゃいました。

けれども、一般レベルでは、バングラの革=粗悪 と勘ちがいしている方がいます。もし、粗悪な革を見たとしたら、きっと買い付けされる方が、品質よりも値段をターゲットにしたのだと思います。日本では、よくバングラデシュ産の下地が輸入されますが、製造方法も日本と異なるので、最鞣しをする際、タンナーさんがよく悲鳴をあげていらっしゃいました。

とにかく、革を作ることは非常に難しいです。そして、本当に過酷な作業です。綺麗な話など言えないし、ある種我慢相撲の業種だと思っています。

話は元に戻ります。バングラデシュで30種類以上革の開発に携わりました。しかし、今はその30種類あった革とは、お別れしています。すごく苦労して作った革だけど、模倣され、その権利を横取りされてしまいました。

革は我慢の業界です。でも、また素敵な革の開発に携われています。そして、今の革がもっと好きになりました。日本の革屋さんがそっと教えてくれました。革は欲ばっちゃいけないんだよと。自然が与えた資源だから。素敵な教訓をありがとうございます、日本の革屋さん。